「口を開けろ」
僕はそばに行ってひざまづくとできるだけ大きく口を開ける。
ぺッて吐き出されるトオルさんの唾や痰を顔色一つ変えずに飲み込むのが僕の仕事。
服従の証。前はよくこの後鞭で打たれた。顔をしかめた罰で。
罰で打たれる鞭って痛い。
打たれるたびに飲まされることと打たれることがイコールで繋がってって
その頃の僕は飲まされると直後にもう泣き出しそうになっていた。
「何を泣きそうな顔をしている」
この言葉で僕はもう緊張がピークになって。
嫌がってるわけじゃないことをわかってもらおうと必死になって。
「やじゃない。」
きつい目で品定めするみたいに僕を見つめ続けるトオルさん。
「う、打たないで・・・。いやじゃない。」
僕はトオルさんが怖くてたまらない。まばたきすると涙がこぼれた。
だけど泣くのもご法度。泣いたら許されるものも許されなくなってしまう。
だから僕はこれ以上泣かないように怒られないように
できるだけ目を見開いて瞬きしないように気をつけてた。
トオルさんの手が首にかかる。片手でのどをつかまれる。怖い。
「ほ、ほんとです。いやじゃない。いやじゃないんです。打たないでください。」
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