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海の向こう

支配と服従。絶対的支配権を行使する主人と、服従するしか生きる術のない子飼いと。そういう立場があたりまえに存在する架空世界のお話です。飼われる人間と飼う人間との愛憎劇をお楽しみください。そして、時々は泣いてね。行き場を失った僕らの魂のために。

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夢の中でKさんと僕は海を渡ろうとしてた。
僕は水に濡れたらダメな理由でもあるのか
自分で歩けばいいのにKさんにおぶわれてた。
陽がすっごく高く昇ってて照り付けてて
僕は行きつけるのか少し不安だった。潮が満ちてきたらどうしよう?
なのにKさんは僕をおぶって腰まで海に浸かったままザブザブ前に進んでた。
Kさんにおぶわれたままずっと周囲に目をこらしてた僕は
やっと休めそうなとこを見つけてKさんに提案した。
左手に岸の残骸(壊れかけたコンクリで固めた部分がある岸)があったんだ。
「Kさん、あそこ休めそうです。少し休みませんか?」
「じゃちょっと休もう」

Kさんがあっさり同意してくれたので僕はほっとしてた。
足元が浅くなってって僕が下りても足首まで浸かるくらいになった。
「Kさん、僕下ろして大丈夫ですよ。そこ浅いから歩けます。」

Kさんはそれでも僕を水の中におろしたくないのか
僕を一旦横抱きにしてから浅瀬を超えた地面の方におろしてくれた。
僕は陽に当たり続けたKさんの体力が心配だった。
急いで背負ってたリュック下ろして中からシャツを取り出して渡した。
中に赤と白のタータンチェックのKさんのシャツも入ってるはずなのに
先に出てきたのは僕の緑と青のタータンチェックの方で
だけど僕にはぶかぶかサイズだからきっとKさんでも着れるだろうと思いながら
急いで陽をさえぎりたかった僕は自分のシャツをKさんに渡した。
「Kさん、休んでる間これ着てください。」
「暑いからやだ」(着てくれなかった!)

Kさんは僕がシャツ渡そうとするの見て
暑いから嫌だって顔と大丈夫だからって笑いと半々に浮かべながら言った。
僕は辺りを見回して
「それならせめてもう少し下がって休んでください。
 あの段の上に座れば少なくとも上半身は日陰に入れそうですから」

岸は狭かった。
ほとんど地面がない。
あるのはコンクリの残骸ばっかり。それもちょっとだけ。
僕が何とか座れそうな塀みたいなブロックのとこを指すと
Kさんは移動してくれた。
陽が少し傾き始めてて完全に日陰に入れてほっとした。
(移動してみると見た目より少しだけ広いところがあって
だけどそこに先客のキャンパーか何かの細長いマットと荷物があった。
でも人影はなくて、僕らはそれをちょっと気にしながらそこで休むことにした)
Kさんは体操座りみたいな格好で自分のひざにひじをついて目をつむってて。
僕はKさんの体力が心配でリュックをあさって
熱くなってしまってるはずのお茶とビスケットを取り出して渡そうとした。
「かいがいしいねお前(笑)」

Kさんが、女みたいだってからかってるみたいな声で笑った。
「おぶってもらってるんだから当然です!」

喉が渇いてるはずだったしお茶はたくさんはなかったし
ビスケットは水気がなくて食べにくいから
受け取ってくれないんじゃないかと不安だったんだけど
Kさんがあっさり受け取って口にしてくれたから僕はすごくほっとした。
他にできることないかな?
僕はKさんの背後にまわって肩を揉もうと思った。
本当は背中や腰も揉ませて欲しいんだけど
敷物も何もなくてコンクリートの欠片が散らばってて狭くて
こんなとこじゃきっとうつぶせになってくれないだろうと思った。
僕をずっとおぶっててこってるはずだから
せめて肩だけしっかり揉んであげようって思いながら
肩に手をかけて僕はまた少し悩んだ。
陽に焼けてるはずなんだけど揉んだら痛くないだろうか?

陽が沈み始めてた。
海の向こうにでっかくて赤い太陽が沈み始めてた。
Kさんは座ったままそれを眺めててまるで不安がないように見えた。
ここで夜をあかさなきゃならなくなったし
海を渡りきるまでまだずーっと歩かなきゃならないはずなのに。
途中でこんな風に休めるところがあるかどうかも分からないのに。

僕はKさんの疲労が心配だったけど
自分でも意外なことに渡れるかどうかはそこまで不安じゃなかった。
Kさんが全く心配してなさげだったから。
すっごい楽観的。穏やかな顔をしている。
でも周囲が青くなる間際ふと思った。
Kさんはそう見せてるだけなんじゃないんだろうか。
僕が怖がるから?
本当はいろいろ考えてても表に出してくれない気がした。
Kさんの本音は全く分からない気がした。
でも僕は何か納得した。
Kさんはずっとこうやって生きてきたんだ。
行き先の不安や心配事はきっとKさんもあるんだと思った。
でも僕のためってだけじゃなくて
Kさんはそういうの表に出さないようにしてるんだと思った。

陽が沈んでしまったのにKさんがずっと同じところを眺めてるので
僕はきっと渡った海の向こうを見てるんだと思って
黙って一緒に眺めることにした。


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僕はこの夢を見た時、頭の中で何度も繰り返した。
目が覚めてから忘れてしまいたくなくて
起きる時間まで横になったまま
何度も何度も頭の中で繰り返した。
忘れたくなかった。
それから少し日にちがたってから、Kさんに伝えた。
夢の中のKさんが考えてたことを聞いてみたかったから。
Kさんはなぜか喜んでくれた。不思議だった。

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この記事へのコメント
Kさんはお元気ですか?
今もお付き合いはあるのでしょうか?
2007/07/25(水) 20:56 | URL | F住人 #s7IGOOmQ[ 編集]
お久しぶりです。
やっぱりこれ、リョウくんだったんだ。
もうKさんのブログ見れないけど、
これ彼のところで読んでました。
その時リョウくんのことよぎりました。

また、よろしくね。
2007/07/25(水) 18:37 | URL | バシ #-[ 編集]
海の向こうには
海の向こうには何があるんだろうね。
希望に満ちあふれているといいね。

そして願わくば、いつかは、二人で肩を並べて泳ぎながら
向こう岸にたどり着いて欲しいな・・・というのは、私の勝手な
思いです・・・

応援しています。
2007/07/25(水) 08:32 | URL | A #t50BOgd.[ 編集]
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