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初物

支配と服従。絶対的支配権を行使する主人と、服従するしか生きる術のない子飼いと。そういう立場があたりまえに存在する架空世界のお話です。飼われる人間と飼う人間との愛憎劇をお楽しみください。そして、時々は泣いてね。行き場を失った僕らの魂のために。

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洗浄の続きです

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全身の洗浄をされた僕は、また引きずられるようにして居住区に戻された。
下腹部が痛くて気持ち悪くて下半身に力が入らないような気がする。
僕は自分のベッドにうつ伏せたまま、「仕事」前の待機時間を過ごしていた。
今日は呼び出されませんように。
神様お願い。今日は誰にも呼ばれませんように。



・・・あの時の僕の願いがどれだけ無駄なことだったか
今の僕にはよくわかってる。
だって呼ばれる予定があったからの洗浄だったんだもんね。
あの時僕は、二度めの格落ちをしたちょっと後で
そして、そのランクでの初めての予約客の相手をすることに決まってた。

それまでのランクだったら、洗浄が必要になるようなことはされない。
口でさせられるか、手でさせられるか。もしくは素股か。
お客を愉しませるためのプレイだって
せいぜい餌を与えられたり、尿意を我慢させられたりとか。
使われる道具だって、柔らかい材質でできたロープとか皮の手枷と
音は大きいけどそんなに痛くはない軽い鞭とかだけ。
(と言っても当時はとても痛く感じていたけど。多分恐怖から余分に。)

でもその日の注文はオプションつきだった。
僕は「初物(はつもの)」として特別予約されていたのだった。
だからいつまでも居住区に居座るようなまねが許されるはずもなかった。
ほどなくして兄格に名前(店だけで通用する名前があった)を呼ばれた僕は
待機室を抜かして直接特別室に行くように言われた。
・・・聞いたことはあるけど自分ではまだ行ったことのない部屋・・・
恐れをなしている僕の右腕をつかんで兄格が歩いて行く。
いつもは通らない廊下の向こうに重厚な趣の扉があった。

兄格は、まるで逃走を防いでいるかのように僕の右腕を強くつかんだまま
左手で部屋のインターホンを押して中に声を掛けた。

「お待たせしました。ご予約の初物(はつもの)をお持ちしました。」

「入りなさい」

僕はインターホンごしの少しひびわれた声を聞いただけで鳥肌が立った。
でも、兄格がドアをあけながら部屋に入るよう僕を促す。
背中を押されて部屋に入る直前、
兄格が僕の耳に口を寄せると低い声で素早く言った。

「逆らうんじゃないぞ」

見上げるととても怖い顔だった。緊張感が漂っていた気がする。
兄格としても、僕がお客を怒らせれば自分たちの責任を問われるのだ。
時々は優しい兄格も、こういう時はとても怖い。


「何をしている」

中から聞こえた厳しそうな声に、僕はあわてて部屋に入った。
お客はソファに深く腰かけてひざを組んだまま僕をじっと見ている。
どう振舞っていいかわからなかった僕はぺこんとお辞儀をした。

「なってないな」

お客がサイドテーブルに用意されていたお酒に手を延ばしながら言った。

「特別予約だというのに、礼儀も教わっていないか。」

どうしていいかわからない僕が立ち尽くしているとお客が言った。

「やりなおせ」

「す、すみません」


謝っては見たもののどうしたらいいのかわからない・・・。
でもさっきの兄格の怖い顔が目に浮かぶ。
どうしよう。礼儀がなってないと言われた・・・兄格に怒られる。
この時まで僕にはまだ、お客様方よりも兄格の方がはるかに怖い存在だった。

土下座に続く

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